遣唐使の加拉巴(Jakarta)漂流記

と或る日系企業の管理畑で働いている田舎者が、遣唐使として中国に派遣された後、今度は東南アジア・インドネシアに派遣されたお話です。日々気づいたことをレポートします。内容については十分確認をとっていますが、あくまで筆者の主観によるものであり、また、正確さについて担保するものでないことは十分ご承知おきください。

Astra International Tbkの分析

Financial Analystらしく、個別企業の分析とかして投稿数稼ごうかと思う。実際、上場企業の分析はマーケットの分析に非常に有効なので。ということで、第1回は、現在大注目の巨大コングロマリットから。

 

  (IDR Bil) 2016年12月 2017年12月 2018年12月 2019年12月
  売上高        181,084        206,057        239,205        237,166
  純利益          15,156          18,847          21,673          21,707
  総資産        261,855        295,830        344,711        351,958
  純資産        111,951        123,780        136,947        147,847
  (同比率) 42.8% 41.8% 39.7% 42.0%
  年度末株価            8,275            8,300            8,225            6,925
  年度末時価総額        196,433        197,026        195,246        164,386
  同PER            12.96            10.45              9.01              7.57
  同PBR              1.75              1.59              1.43              1.11

 

 

Segment Information 

 

 

 

 

(IDR Bil)

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

輸送機

         96,062

         96,477

       107,322

       104,843

金融

         17,869

         18,768

         19,446

         20,437

重機・建機・資源

         45,539

         64,559

         84,625

         84,431

農業

         14,121

         17,306

         19,084

         17,453

インフラ

           8,029

           7,628

           7,419

           8,105

IT

           2,713

           3,918

           4,070

           4,722

輸送機

           8,166

           8,868

           8,518

           8,396

金融

              789

           3,752

           4,815

           5,864

重機・建機・資源

           3,032

           4,469

           6,630

           6,711

農業

           1,599

           1,602

           1,146

              168

インフラ

              263

-            231

              196

              168

IT

              196

              189

              208

              292

  • Salim、Sinarmas、Lippoと並ぶインドネシアの巨大財閥Astraグループの中核となる総合商社で、自動車製造・販売が主力。日系大手自動車(トヨタダイハツいすゞ)と組み、国内自動車販売の50%超のシェアを有する自動車のガリバー。1950年代に貿易会社として設立され、以降業容を拡大したが、アジア通貨危機で事業再編を迫られ、香港大手商社のJardin Cycle & Carriageに身売りすることとなった(現在も50.1%出資)。
  • 自動車以外にも、United Tractors、Astra Agri Lestariなど、傘下に巨大事業会社を抱える。
  • 自動車部門はDXによる事業構造改革を進めており、トヨタ車販売のECサイトを設立するなどしている。一方で、現在ポートフォリオの見直しを進めており、金融部門の中核会社であるPermata Bank(英Standard Charterd銀行と共に44.6%ずつ出資。尚、同銀行の19年純利益は1.5兆ルピアで、Astra寄与分はIDR670Bil)の売却が進行中。タイのBangkok銀行が両社から80%超の株式を買い取る予定で、インドネシア金融監督庁(OJK)の承認は取得済み。ポートフォリオという点では、インフラ部門の強化を進めており、ジャカルタ周辺高速道路の運営事業に力を入れている。
  • コングロマリットとはいうものの、現状、収益のほぼ半分を輸送機部門が稼ぐ構造。金融部門の再編も、より収益性の高い、カーローンのようなコンシューマーファイナンスへ寄せるものとみられる。インドネシアは巨大な人口と成長する中間層で、民間消費の拡大が期待されているが、国内景気は主力輸出品であるパーム油と石炭の市況及び海外からの投資に支えられており、2019年は、米中貿易摩擦インドネシア大統領選による政治経済の混乱長期化で、国内景気が低迷、新車販売台数が通年で102万台(前年対比11%減)となった。2020年度も、コロナ禍の影響で、自動車販売の伸び悩みは必至だろう。
  • 20年4月28日に発表した20年1Qの決算(速報)は、純利益IDR4,810Bilと、前年同期比8%減。足元の株価はIDR3,660(20年4月28日終値)で時価総額IDR86,881Bilと、19年度末の半分に落ち込んでいる。自動車販売が本格的に影響を受け始めたのは3月以降とみられ、2Qのほうがもっとひどいことになるだろう。
  • 銘柄としては見送りかなぁ。

インドネシアの株式市場

結局全然更新できていなかった。反省を込めて、非常に簡単、かつ今後の基礎となる内容をまとめたい。

 

インドネシアの株式市場

ジャカルタに所在する証券取引所のみ。実はオランダ統治時代から存在しており、歴史は古い。

 

代表的な指数は以下の通り。

  • ジャカルタ総合指数(IDX Composite/Jakarta Composit/Indeks Harga Saham Gaungan):全上場株式の時価総額を元に算出した指数。
  • IDX80:全上場株式の内、時価総額の大きなもの80社をもとに算出した指数。
  • IDX30:同上、30社。
  • LQ45:同上、45社。

上場企業の19年12月末時点の時価総額ランキングは下記の通り(為替レート:IDR128/円)。

  1. Bank Central Asia Tbk         銀行 6兆3,738億円
  2. Bank Rakyat Indonesia(Persero)Tbk   銀行 4兆1,976億円
  3. Telekomunikasi Indonesia(Persero)Tbk 通信 3兆724億円
  4. Bank Mandiri(Persero)Tbk        銀行 2兆7,702億円
  5. Uniliver Indonesia Tbk        消費財 2兆5,036億円
  6. Astra International Tbk   コングロマリット 2兆1,902億円
  7. H.M.Sampoema Tbk         タバコ 1兆9,083億円
  8. Chandra Asri Petrochemical Tbk    化学 1兆4,455億円
  9. Bank Negara Indonesia(Persero) Tbk  銀行 1兆1,323億円
  10. Barito Pacific Tbk      コングロマリット 1兆501億円
  11. Indofood CBP Sukses Makmur Tbk   食品 1兆159億円
  12. Chaeron Pokphand Indonesia Tbk コングロマリット 8,327億円
  13. Gudan Garam Tbk           たばこ 7,967億円
  14. Sinar Mas Multiartha Tbk   コングロマリット 7,574億円
  15. Pokkux Properti Indonesia Tbk     不動産 7,214億円
  16. United Tractors Tbk          輸送機 6,273億円
  17. Kalbe Farma Tbk            製薬  5,933億円
  18. Semen Indonesia (Persero) Tbk   セメント 5,561億円
  19. Indocement Tunggal Prakarsa Tbk  セメント 5,472億円
  20. Indofood Sukses Makmur Tbk     食品 5,436億円

こうしてみると、一昔前の日本のように、銀行・通信が強い。そして輝くUniliver。

 

 

 

20年3月度自由研究① ジャカルタの基本データ

中国人もすなるといふ日記を、ジャカルタでもしてみむとして、するなり。

 

この春よりジャカルタに赴任しています。

COVID-19の影響で一時はどうなることかと思ったけど、ひとまず到着できたので、何より。

元来、調べ物をしたり、妙なことに首を突っ込んだりするのは好きなので、以前中国駐在時に会社から命令されてやっていた月次自由研究を、今度は自分からやっていこうと思っています。今回は週次にします(忙しい時期を除く)。週次にして回数を増やし、とにかく雑学を集めて、深堀りしていこう、という企画です。雑学なので、本当にレベル感低くやります。政治経済とかよりも、もっとローカルな、トレンドみたいなものを追えればいいな、と(とかいいながら、今回はばっちり経済関連ですけど)。3年位やれば100個くらいTipsが貯まるかな〜。

 

まずは、任地であるジャカルタの基本データを頭に叩き込むところから入りましょう。

個人的な過去の経験から、上海あたりと比較すると分かりやすい(当社比)かな、と。

項目 ジャカルタ 東京 上海 データ元
都市圏人口(万人、順位) 3,437(2) 3,851(1) 2,213(6) 2015年Brookings
域内面積(km2) 3,367 8,223 4,015 同上
域内GDP(億ドル、順位) 3,213(30) 16,170(1) 5,940(8) 2015年Brookings
滞在邦人数(人) 15,304  ー  53,115 2019年外務省
日系企業数(社) 1,741  ー  23,441 同上
最低賃金 33千円/月 170千円/月 39千円/月 2020年JETRO
鉄道

地下鉄1路線

KRL6路線

地下鉄9路線

JR6路線

他14路線

地下鉄14路線

リニア1路線

他3路線

Wikipedia
ビッグマック指数(国) $2.41 $3.54 $3.12 2020年Economist
 ユニクロ店舗数 16 101(東京都) 77(上海市) FR公開情報より 

 日本企業の進出状況をみるのに、ユニクロの動向は案外悪くないかな、と思っていれてみました。その他定性的には、自動車販売数とかもありなんでしょうが、ドイツ・アメリカ車中心の上海と、日本車が圧倒しているジャカルタはある種比較しやすいので、それは別でやることにして。

 

わかってはいたけど、公共交通機関の弱さはすごい。上海は更に10路線ほど拡大するという計画があり、東京エリアを抜くのも間違いないでしょうね(上記東京は東京・神奈川の路線数なので千葉とか埼玉入れると変わるんだろうけど)。一方で、ようやく地下鉄が一本出来ただけのジャカルタは・・・。

 

あとは、最低賃金が円貨ベースでは、上海と同じくらい、ということ。あくまで最低賃金だから、ブルーワーカーを対象にしているわけで、実際のところ、上海の日系企業では大卒初任給CNY4〜5K/月がボトムラインというところでは、と思うので、そこまで参考には出来ないだろうけど。何より、賃金上昇率が8%ということで、経済成長の力強さを感じますね。うちの会社の人たちも、給料あげないと激おこなんだろうか。

 

/以上